事務所の応接間にて

私の事務所にも、建築に関係していない方が来られることがあります。そういう時、狭いですが事務所の応接間に通します。

応接間は杉板の堀座卓で、昔ながらの和室です。
そんな折、よく言われます。

「この和室は、落ち着いていていいですね。」

その後、主体の用件を話し終えると、私が誘発したわけでもないのに、また建築の話になります。

「私は何年か前に家を建てたのですが、こわした古い家の方が、今の家より居心地がよく愛着があって良かった」とか「前の家の方が帰る気がする」とかいう話を聞きます。
昔なつかしい和室を見て思い返し、家作りを後悔され、帰られる方が2、3人いました。
私は以前、量産のアパートの一室に事務所をかまえていました。仕上げは新建材で作られ、ビニールクロスでした。お客さんが来ても、建築の話はおろか用事がすむと、すぐ帰ってしまいました。
今は、この建物になってから落ち着くらしく用件が済んでも話に花がさいて、なかなか帰りません。いらぬことまで話をして長居をしていきます。まあ、それだけ居心地がいいのだとありがたく思っています。
今の新建材の建物と昔の建物の、あたたかさ、やさしさの度合いが違うのかもしれません。五感にうったえる何かが違うのだと思います。
また、そういうものを感じてくれる人がいるということが、まだ捨てたものではないと思います。
均一化した住宅を簡単に建ててしまうのではなく、後悔しないためにも、家を建てるときに、本来日本のもっている建築の良さをもう一度見直し、考えてみたらと思います。
杉板張りの家にはいり、深呼吸してみると、空気が違うのを全身で感じます。

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