まさか、こんな日がくるなんて
私の出番が、またやってきた。
12月も残すところあとわずか、年内に片付けることや、
来年の準備を、あれこれ考えるこの頃になりました。
一年が短いなぁと、いつも思うのですが
今年は、まさか…と驚くことがありました。
22年前に新築工事をさせていただいた建築主さんの、
なんと、再び、ご自宅の新築をさせていただくことになったのです。
現在の住宅は海に近く、津波が心配になり、安心して生活したいと
高台への移転を決め、新築することになりました。
22年前、私がまだ駆け出しの頃、信用もない実績もとぼしい私に
家づくりをまかせていただきました。
今、考えればすごく勇気がいったことだろうと思います。
私が独立し、設計施工の家づくりを始めた間もないころの
住宅です。
私の仕事の原点ともいえる家です。
22年間、いろいろなことがありました。
強い台風で瓦がとんでしまったり、台所の水栓がこわれたり
地盤が悪いため、外の配管がはずれてしまったことも
ありました。
タイル張りのお風呂を、ユニットバスにも取り替えました。
建築主さんとは、いろいろ良いことも悪いこともありましたが
そのつど乗りこえてお付き合いさせていただきました。
私を、一番信用してくれたのは構造です。
建築地はあまり地盤の良くない土地でした。
道路に不陸があり、側溝もまがっていました。
その頃は、地盤改良したり、杭を打つことはまれで
地盤が悪ければ、ベタ基礎で施工するのが通例でした。
周りの家は、杭は打たないで建てていました。
私はその頃から、構造には慎重派でした。
前面道路の不陸を見たとき、このまま何もせずに
ベタ基礎だけで施工するのは、だめだと思いました。
鉄骨造やRC造では重いので、地盤が悪ければ杭を打つのは
あたりまえでしたが、木造住宅に杭を打つということはまれで
金額的な負担が建築主さんに、重くのしかかってきます。
今とは施工内容が違うので、かなり高い金額になりました。
「地震に大丈夫なように、地盤沈下をおこさないように
杭を打たせてください」と、建築主さんに内容を説明し
お願いしました。
建築主さんにとっては、途方もない予期しない出費に
なってしまいましたが、理解をしていただき、杭打ち工事をして
最終的に家を完成させました。
かいあって家は、22年間少しの狂いもなく、今もしっかり建っています。
最近、その家の近くでショッピングモールを建設するということで
工事前の事前調査にきて、建物の状態を調べていったそうです。
建築主さんが、調査にきた方にどうでしたかと聞いてみると
水平を見ましたが、この家は完璧でしたと言っていたそうです。
22年経った今、その周りを見渡すと、長い年月のなかで杭を打たなかった家は
地盤の不同沈下によって傾いてしまい、2軒ほど取り壊されて駐車場になり
地盤処理をしたあらたに建てた家もあります。
傾いたままの家も、2,3軒あったりします。
構造の大切さを、あらためて感じます。
今、私が土地をみきわめ杭をうって、22年間なにもなく
楽しく過ごすことができたことを評価していただき
再度、依頼をしてくれたのだと思います。
私にとっては、このうえなく、うれしい出来ごとです。
建築主さんの期待に応えられるよう、最善をつくしていきたいと思います。
私の出番がまたやってきました。