自然のまま自給自足の「麦の家」
滋賀県比叡山のふもとにある自給自足の家、「麦の家」があります。
雑誌"チルチンびと"に連載で紹介されている家です。
ここでは 山崎さん一家7人が、自然に抱かれ田畑を耕し、
農作物を作り、
かいこから糸をとって衣服を作り、
自然の恵みに感謝しながら 自給生活を営んでいます。
その暮らしの場として 先代の建てた葦ぶきの趣のある
重厚な農家住宅「麦の家」があります。
広間の真ん中には、みんなが集まれる大きないろりがあります。
集いや行事でいろいろな人がコミニュケーションを交わし、
人の結びつきの場にもなっています。
また 建物の周囲には、ぐるっと縁側があり、
いつでも田畑の状況を見渡せます。
建物の中から見ると、その風景が広がり、
心なごむ庭のように見えます。
農作物によって、四季折々に 色彩が変わり、
夏には夏の、秋には秋の、
いろんな姿を見せてくれます。
自給自足の精神をつらぬき、
3世代がこの家で暮らしています。
訪ねた日は あいにくの雨でした。
足元が悪く舗装されていない土の道を、
傘をさして訪問しました。
お忙しい中 山崎さんが温かく出迎えてくれて、
お話を聞かせてくれました。
自然の大切さはもちろん、
衣食住を自らの手で行うことが、
本当の心の豊かさや安堵感につながること、
人間としての原点が そこにあるということ、
便利さや物質的欲望に目を奪われ、
本当の豊かさや幸せを見失っていないか、
文明と経済合理主義の名のもとに、
地球環境をだめにしていないか。
自然と心のかかわりあいについて貴重なお話を伺い、
うなづくことばかりでした。
気づいているものの、実践されている人から言われると、
大きな衝撃でした。
現代社会が忘れかけているもの、置き去りにしてきたものを
今でも大切にしっかりと守って暮らしている・・・頭が下がる思いです。
お話のあと、建物を見せていただきました。
どこも自然の木のやさしさが あふれています。
手道具で建てた骨組みの味わいと、
ほどよい松梁と柱との径のバランスが、
心地よい空間をつくってくれています。
いたるところの チョウナ仕上のあたたかみ、
いろりで長年いぶされた木の風合いが
やさしく見えます。
毎朝木に声をかけ、縁側、床、柱を雑巾がけして、
みがいているそうです。
水を与えると、木がみずみずしくなると話している
山崎さんが、建物となじんでいるように、
私には見えました。
私の建築した建物も同じように、
住まう人と一体となり、なじんでくれたらいいなと思います。
子供のころ見たことのある、自然そのままの懐かしい風景が、
「麦の家」にはあるような気がしてなりません。
誰もが、生活の原点を見た時に感じる、なつかしさなのでしょうか?
心が洗われるような気分と
何も変えることのできない無力さと焦燥感を、感じながら帰ってきました。
山崎さん、貴重な体験ありがとうございました。
これからは、少しでも 環境に良いことをしていこうと思います。
雑誌"チルチンびと"中の「麦の家」の連載は続きます。
機会があれば読んでみて下さい。
これからの生き方のヒントになるかもしれません。