残しておきたい建物の表情
月に一度、勉強会のため京都に行く機会があります。
その折、時間をつくって街を散策して歩きます。
建築に携わるものとして、何か目的をもってというのではなく、
商売柄いろいろな建物を見てみたいのです。
自分が建築でやっていることは、建築という知識のなかの、
ほんの狭い範囲でしかありません。
京都は、いろいろな昔ながらの建物が保護され残っています。
先人がつくってきた建物や街並みや風景を、
一体として見ることができるところです。
いろいろな表現が伝授され、すばらしさをさりげなく表わし、
建築の深さや質を感じないではいられません。
私なりに、感動し、いろいろな発見をします。
写真のレンガづくりの建物は、私がふと路地に入ったところで見つけた
解体寸前の建物です。
貸し店舗として使われていて、一部がテーラーとして
営業していたそうです。
この建物は、情緒と趣きがあり時代を感じさせます。
レンガ積みの、なんともいえない風合いがとてもよくて、
ずっと見ていました。
壊してしまうには、おしい建物だと思いました。
京都も時代とともに、古い物が壊され、新しく様変わりしてゆきます。
時代の移り変わりは仕方のないものですが、
さみしい気持ちにもなります。
この建物は、今はもう解体が終わり、存在していません。
残っているのは、私がとってきた写真と、
感動して見ていた私の記憶のなかだけです。