「たたみ床の図書室で本を楽しむ家」 U邸

この新しい家で暮らし始めて、3週間余りがたちました。
無垢の木のいい匂いや、やわらかな触感、タイルのやさしい色遣い、といった心地よさを、五感で満喫しているところですが、その中に、不思議な安心感があるのを感じています。
私たち家族が沼津で家を建てようと、まず土地探しから始めたのは、1年4か月前のことでした。
夫婦とも元々、自然豊かな場所(田舎とも言いますが…)で生まれ育ったため、愛鷹山の麓で豊かな自然がすぐ近くの場所に賃貸住まいをしていました。
土地探しも、市街地からは少し離れた自然に近い場所を探していましたが、なかなか決められずにいました。
工務店選びの方は、在来工法で、自然素材を使った所がいいなと思い、折り込みチラシを見て、完成見学会に何軒か行っていました。
他社の見学会では、断熱工法の説明パネルや、住宅ローンの選び方等、家にまつわることを色々と雄弁にアピールしていました。
一方、植松さんの見学会は、そういった余計なものがなく、家そのものを見て、感じて、ということが邪魔されずにできました。


植松さんは、本物の木、本物の素材で家を作れば、見た目の優しさや柔らかな触感を楽しめるだけでなく、長持ちし、シックハウスの心配もなく、また耐震性は基準の2倍で建てている、など話してくれました。
中でも、最も印象に残った言葉は、本物に触れてこそ子供の感性は育つ、というものでした。
植松さん自身が設計・施工まで手掛けているということで、ご本人の作った家の中でお話を聞いたためでしょうか、素人の私にも不思議と納得できるような気がしました。
その後、植松さんの見学会を何軒か訪れましたが、どの家も、木の匂いがして空気が気持ちよく、本物の木や自然素材で作っているという言葉のとおり、正直に作っているのだなという印象を強くしました。
また、会ってお話するにつれて、情熱的に語る言葉の中に、人の住む家とは本来こうあるべきだ、という信念を感じるようになりました。

植松さんの作る家の印象と、植松さんの言葉の印象、そして植松さん自身の印象が、全くブレることがありませんでしたので、この人なら信頼して家づくりを任せられると思いました。

本物の素材を使えば、当然、安く大量に製造できる工業製品よりも費用がかかりますが、ずいぶん考えてくださったおかげで予算内に収めることができました。
例えば、同じ国産の無垢材でも樹種を選ぶことや、設備機器の必要な機能を生活スタイルに合わせて取捨選択すること、など。
土地の購入に関しても、近くの土地のボーリング調査結果を示して地盤の状態を説明してくださったり、不整形地でも無駄のない間取りをとれることなどを教えてくださり、決断を後押ししてくれました。
家づくりを進めるなか、何度も話し合いました。
壁一面を本棚にした図書室をという私たちの希望に対しては、和室にすれば、座っても寝転がっても気持ちがい いと提案してくれたり、2階にリビングをという希望に対しても、2階をリビングのような大空間にすれば1階は壁が多くとれて、耐震性が高まる、というよう に、専門的な視点から肯定してくれたり。

私の思い入れの強い所の一つに、階段がありました。
幅を少し広くしたいとの希望を取り入れてもらい、U字形で小さな踊り場もあって昇りやすく、上方に設けた天窓は北側にあるため、直射日光が入らずに安定した光で日中常に明るくしてくれます。

視界の変化も面白く、階段の昇り降りも、さほど苦にならずむしろ楽しめるほどです。
話し合いの中で、希望やちょっとした思いなども聞いてくださったので、家の中の一つ一つの場所にその思いが生きているような感じがします。
植松さんと家づくりを進める中で、家以外にも影響を受けたことがあります。
木材屋さんで無垢の木に触れて、本棚を作ってみたり、小さなギャラリーで身近な芸術の良さを知ったり。
家ができて、子供の感性が育つ前に、私たち親の感性も豊かにしてくれました。
植松さんが言う、“本物でつくる”ということは、ニセものでない、素材そのものが本来持つ力を、ゴマかしたり手抜きしたりすることなく、精いっぱい発揮する、ということのような気がします。
それは、無垢の木やタイル、塗壁などの素材から感じられることだけではなく、植松さんを始め職人さんたちの仕事が、まさにそうでした。

信頼できる本物の素材と、何度も話し合った過程を経た信頼、家が建つ過程を日々この目で見てきた信頼、があったからこそ、住んでいる今、まだたった3週間にもかかわらず、安心感があるのかなと思います。

これから年月を積み重ねることで、この安心感の上に、愛着がわいてくるのだろうなと思うと、それがまた本当に楽しみです。
2012年1月15日